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WIPO 仲裁調停センター

紛争処理パネル裁定

Perfetti Van Melle S.p.A. 対VALUE-DOMAIN COM

事件番号 D2009-0562

1. 紛争当事者

本件の申立人は、ペルフェッティ ヴァン メッレ S.p.A(Perfetti Van Melle S.p.A.)(ミラノ、イタリア)である(以下、「申立人」)。 本件の被申立人は、バリュードメインコム(VALUE-DOMAIN COM)(大阪府、日本)である(以下、「被申立人」)。

2. ドメイン名および登録機関

紛争対象のドメイン名:<k-chupachups.net>(以下、「本件ドメイン名」)

本件ドメイン名の登録機関:Key-Systems GMBH(ドイツ)(以下、「ドメイン名登録機関」)

3. 手続の経過

本件申立書は、2009年4月29日にWIPO仲裁調停センター(以下、「センター」)へ提出された。センターは2009年4月30日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を本件ドメイン名登録機関に要請した。2009年5月1日に本件ドメイン名登録機関はメールによりセンターへ登録確認の返答をし、被申立人がドメイン名の登録者であることを確認し、その連絡先の細目を通知した。また、同登録機関は2009年5月19日に本件ドメイン名の登録合意書の言語が日本語であるとメールでセンターへ通知した。そのためセンターは、当事者に対して2009年5月20日に手続言語に関する通知を行った。2009年5月26日に申立人は日本語に翻訳された申立書をセンターへ提出した。

センターは申立書、および翻訳された申立書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下、「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則(以下、「補則」)における方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条(a)項および第4条(a)項に従い、センターは本件申立書を被申立人に通知し、2009年6月2日に紛争処理手続が開始された。手続規則第5条(a)項に従い、答弁書の提出期限は2009年6月22日であったが、被申立人は答弁書を提出しなかった。従って、センターは被申立人の懈怠を2009年6月23日に通知した。

センターは、ダグラス・クラークを単独のパネリストとして本件について2008年7月7日に指名した(以下、「紛争処理パネル」)。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。手続き規則第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

4. 背景となる事実

被申立人より答弁書、あるいはその他による提出がない為、以下の情報は、申立書の事実として主張される。

商標「Chupa Chups」は申立人に帰属する。申立人は1963年から同商標を国際的に登録しており、1998年には日本でも登録した。申立人は、1958年以来、スペインで棒付きキャンディーに当該商標を使用しており、現在では当該商品を付する商品は世界中で広く宣伝販売されている。2007年と2008年の当該商標を付した商品の販売総額は、それぞれ1億6545万6千米ドルと2億4354万3千米ドルであり、広告宣伝費用は1618万8千米ドルと1867万7千米ドルである。日本における当該商標を付した商品の販売総額は、2007年度は27億8900万円、2008年度は36億7400万円であり、広告宣伝費用は、2007年度は3億2100万円、2008年は3億2200万円に達している。申立人は日本において複数の会社に当該商標の使用許諾権を付与しており、携帯電話のアクセサリー、自転車、ヘルメット、衣服、マグカップ、スポンジ、キーホルダー、文具、書籍など様々な商品で使用されている。

5. 手続の言語

手続規則第11条(a)項は、ドメイン名登録合意書に他の規定および当事者により他の同意がなされていない限り、手続の言語をドメイン名の登録合意書の言語とすると規定している。本件の登録合意書の言語は日本語であることから、本手続きは日本語により行うことを決定する。

6. 当事者の主張

A. 申立人

申立人は、本件ドメイン名の移転を要請する。

申立人は、以下の分析に基づき、処理方針の第4条(a)項に規定されている各要件を充足したと主張する。

処理方針の第4条(a)項(i)に関して、本件ドメイン名は、申立人が有する登録商標「Chupa Chups」を全て包含し、わずか一文字「k」を加えただけなので、申立人の登録商標と混同させるような類似性を有する。

処理方針の第4条(a)項(ii)に関して、被申立人は、本件ドメイン名によって知られておらず、且つ現在までに本件ドメイン名を使用していないことから、如何なる権利又は正当な利益を有さない。

処理方針の第4条(a)項(iii)に関して、申立人は、インターネット上の簡易検索により、被申立人には、「Chupa Chups」は申立人が既に使用している登録商標であることを容易に知ることができ、また当該商標は世界的に著名であるので知らなかったとは考えられず、申立人と全く関係のない被申立人が偶然に申立人の登録商標と類似するドメイン名を登録することは、不正の目的で登録した以外には考えられない。

B. 被申立人

被申立人は、答弁書を提出せず、本件に関して一切応答しなかった。

7. 審理及び事実認定

処理方針の第4条(a)項に従い、申立人は、以下に挙げる各3項目の全てが存在することを証明しなければならない。

(i) 被申立人のドメイン名が、申立人が権利を有する商標また役務商標(サービスマーク)と、同一または混同させるような類似性を有し、 且つ、

(ii) 被申立人は、当該ドメイン名に関して、権利または正当な利益を有さず、且つ、

(iii) 当該ドメイン名は、悪意で登録及び使用されている。

A. 同一性または混同させるような類似性

申立人の提出した各国における「Chupa Chups」の商標登録証によると、日本における登録商標第4296505号、および第4303526号は、当該商標を登録したエンリケ ベルナート エフェ ソシエダ アノニマ(スペイン)から申立人に譲渡されていることがわかる。従って、紛争処理パネルは、申立人が「Chupa Chups」の登録権利者であるとする主張を認める。

紛争処理パネルは、本件ドメイン名は、申立人の登録商標「Chupa Chups」を包含するものであり、一文字「k」が加えられても依然として消費者を混同する類似性を有すると認める。従って、申立人は、処理方針第4条(a)項(i)の要件を充足した。

B. 権利および正当な利益

申立人は、被申立人が本件ドメイン名について権利または正当な利益がないことを立証する義務がある。しかし、通常そのような情報は被申立人が持ちうる知識であることから、申立人が一定の立証責任を果たした場合、被申立に立証責任が移転されると理解されている(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected UDRP Questions2.1.参照)。

処理方針の第4条(c)項に、被申立人により提出されうる権利および正当な利益を証明するような状況証拠の事例が非限定的に提示されている。

(i) 善意による商品もしくは役務(サービス)の提供を行うために、当該ドメイン名もしくはこれに対応する名称を使用していた、または、使用のための明白な準備をしていた。

(ii) 被申立人(個人、企業およびその他の組織)は、商標権およびサービスマークを有していなくても、ドメイン名の名称で一般に知られていた。

(iii) 被申立人は、当該ドメイン名を、正当にして非商業的にまたは公正に使用しており、その際に、消費者の誤認を惹き起こすことにより商業的利益を得る、または、当該商標もしくは役務商標(サービスマーク)の価値を毀損する意図を有していない。

申立人は、被申立人が本件ドメイン名により一般的に知られていることを示す証拠はないと主張した。これにより、本件において、紛争処理パネルは、申立人は、被申立人が本件ドメイン名について権利または正当な利益を有していないとする主張を一応立証したものと認める。

本件ドメイン名は現在使用されておらず、商品およびサービスの提供の為に使用されている証拠、もしくは、本件ドメイン名が合法的・非営利に、または公正に使用されている証拠は示されていない。

以上より、申立人は、処理方針第4条(a)項(ii)の要件を充足した。

C. 悪意による登録および使用

本件ドメイン名は、現在使用されていない。ドメイン名の使用の欠如は、自動的に悪意を証明するものではない(Telstra Corporation Limited v. Nuclear Marshmallows, WIPO Case No. D2000-0003参照)。紛争中のドメイン名が使用されておらず、被申立人が答弁書を提出していない本事件おいて、紛争処理パネルは被申立人に悪意があるか否かを検討する際に、下記の項目が考慮されうると考える。

(1) 被申立人が正当に紛争中のドメイン名を使用しているというような状況と捉えることが可能か。

(2) 被申立人が、申立人の商標権を知っていた、または、知りうることができたが、それにもかかわらず、その商標を含むドメイン名を登録したか。

(3) 被申立人が、紛争中のドメイン名を正当に使用した営利的、または非営利的な事業を行っていることを示す証拠があるか。

本件ドメイン名は使用されておらず、被申立人は答弁書を提出していないことから、被申立人が本件ドメイン名を合法的に使用していたか、若しくは合法的で営利的、又は非営利的な事業を行っているかについて知ることはできない。従って、上記の(1)と(3)の要件は満たされない。

上記の(2)について、申立人の「Chupa Chups」商標使用の長い歴史、事業活動の世界的範囲、また世界的な商標登録の事実を鑑みると、被申立人が申立人の登録商標を知らなかったと推定することは困難である。インターネット上で簡易検索すれば容易に申立人の登録商標に関する情報を入手することができることから、紛争処理パネルは、上記(2)の要件も満たされないと考える。

従って、申立人は、処理方針の第4条(a)項(iii)の要件を充足した。

8. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは当該ドメイン名<k-chupchups.net>を申立人へ移転することを命じる。


ダグラス・クラーク
パネリスト

2009年7月17日

 

: https://internet-law.ru/intlaw/udrp/2009/d2009-0562.html

 

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